CHAPTER0「グランド、ゼロ」その6

…って。
やっぱ居ねえのかよ! ガトウとナガレ!
そりゃあねえ、NPCがPCさしおいて活躍しちゃいけないってのは分かるけど。
戦闘終わったら5人で戦ったことになってるんだろ。


なんて俺が考えてる間に、例によってムラサメが抜刀して突っ込んでいく。
刀使いなのに鉄砲玉とはこれ如何に。
ちょうど人が小さな虫を叩き潰すときのようにドラゴンが足を雪崩落としに振るう。
その光景を本人は見てるのか見ていないのか、ムラサメは更に加速。
結果、ドラゴンが叩き潰したのは一瞬前にムラサメが駆け抜けたあとの空気だけだった。
ムラサメはキュキュッと靴底が擦れる音を上げてドラゴンの後ろ足の付け根あたりで急停止し、下腹に潜り込む格好で間髪入れず腕まで通れとばかりに全身で刀を突き上げる。
「ふんっ!」
ずぶり。
シャワーのように吹き出す体液がムラサメを染めていく。
ああ、刀刺さるんだ、あれ。


どてっ腹に段平を食らわされたドラゴンが苦悶の呻きをあげる。
次は俺だ。
その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやるぜ!ってな。
「爆ぜろ」
爆発音が響き、ドラゴンの頭が横っ面を引っ叩かれたように斜めに大きく傾ぐ。
ぶすぶすと上がる黒煙でドラゴンの頭が隠れる。


首を巡らせて態勢を立て直そうとするドラゴン。
そこへダメ押しの一撃とハヤテが跳ぶ。
「よいしょっ」
軽い掛け声と共に右拳が唸りを上げて振るわれる。
小気味良い音がしてへし折られたドラゴンの牙が飛び散る。


俺らのコンビネーションもだいぶ良い感じになってきたな。
と。
さしがにこのくらいじゃ死なないか。